こんにちは。神社と日本の伝統文化、運営者の「月影」です。
カレンダーの赤い日を見て、ふと疑問に思ったことはありませんか?
これって祝日と呼ぶべきなのか、それとも祭日なのか、はたまた旗日なのか。普段なにげなく使っている言葉ですが、どれが正解なのか迷ってしまいますよね。
実はこれらの言葉には、日本の歴史や文化が色濃く反映された、明確な違いがあるんです。
現代では混同されがちなこれらの言葉も、それぞれの成り立ちを知ると、日本人がどのように季節や神様と向き合ってきたかが見えてきて、とても興味深いんですよ。
祝日や祭日と旗日の違いと正しい意味
「今日は旗日だから休みだね」なんて会話、最近はあまり耳にしなくなったかもしれません。
でも、おじいちゃんおばあちゃんと話していると「祭日」という言葉が自然に出てきたりしますよね。
まずは、現在混在しているこれら3つの言葉が、本来どういう意味を持っているのか、そして現代日本ではどれを使うのが「正解」なのか、私なりに整理してみました。
言葉の背景にある物語を知ることで、カレンダーを見る目が少し変わるかもしれません。
国民の祝日の意味と法的な定義

結論から言ってしまうと、現代の日本において唯一の法的な正解は「国民の祝日(祝日)」です。
これは、戦後の1948年(昭和23年)に施行された「国民の祝日に関する法律(通称:祝日法)」という法律に基づいているんです。
私たちが普段「祝日」と呼んでいるのは、単なる休みの日という意味以上に、法律で定められた「国民全員で祝う日」という重みがあるんですね。
法律で決まっていたのね。確かに私も祝日って言うわね
この法律の第1条には、とても素敵なことが書かれています。少し長いですが、引用してみますね。
自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける
いかがでしょうか。単に「労働を休む日」と定義するのではなく、「美しい風習を育てる」「よりよき社会を築く」という前向きで能動的なメッセージが込められている点に、私はとても感銘を受けます。
現在、日本には年間で16日の「国民の祝日」があります。元日や建国記念の日、こどもの日など、それぞれに「何をお祝いし、感謝するのか」という趣旨が法律で細かく定められています。
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例えば、「海の日」なら「海の恩恵に感謝する」、「山の日」なら「山に親しむ機会を得る」といった具合です。
これらはすべて、日本という国の自然や歴史、文化に基づいたテーマが設定されており、私たち国民がその意義を噛みしめる日としてデザインされているわけです。
ここがポイント
現在の「祝日」は、国民みんなが主役となって、お祝いしたり感謝したりする日として定義されています。
カレンダーや公的な書類、ニュースなどのメディアで使う場合は、必ずこの「祝日」を使うのが絶対的なルールです。(出典:内閣府『国民の祝日について』)
また、近年では「ハッピーマンデー制度」の導入により、一部の祝日が特定の日付から「第○月曜日」へと移動しました。
これによって3連休が増え、観光や余暇を楽しむ機会が増えたことも、現代の「祝日」の大きな特徴の一つですね。
祭日の由来と明治からの歴史的背景

では、「祭日(さいじつ)」とは何でしょうか。響きからして、どこか厳かな雰囲気がありますよね。
実はこれ、明治時代から昭和の戦前(1947年)まで使われていた、由緒ある正式名称なんです。「祭」という字が使われている通り、これは「宗教的なお祭り」を行う日を意味していました。
当時の法律(皇室祭祀令など)では、休日は「祝日」と「祭日」の2種類にはっきりと分かれていました。
そういえば私のおばあちゃんはよく祭日と言ってるなぁ
「祝祭日(しゅくさいじつ)」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これはこの2つを合わせた呼び名だったんですね。
| 区分 | 主な内容 | 代表的な日 |
|---|---|---|
| 祝日 | 天皇家の慶事や国の記念日 | 紀元節(建国)、天長節(天皇誕生日)、明治節(明治天皇誕生日)など |
| 祭日 | 皇室の祖先などを祀る宗教的な儀式の日 | 元始祭、春季皇霊祭、秋季皇霊祭、神嘗祭、新嘗祭など |
表を見ていただくと分かるように、「祭日」とは、宮中で神道の儀式(祭祀)が行われる日のことでした。
例えば「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」は歴代の天皇や皇族の霊を祀る日、「新嘗祭(にいなめさい)」はその年の新しい穀物を神様に捧げて感謝する日です。
これらは皇室にとって極めて重要な私的な行事であると同時に、当時は国家神道という体制の下、国全体の休日として制定されていました。
「祭日」には、単に休みになるだけでなく、国民もまたその時間に宮城(皇居)の方角を向いて「遥拝(ようはい)」と呼ばれるお祈りをすることが求められていました。
学校では式典が行われ、厳粛な空気が流れていたそうです。私の運営するサイトで紹介しているような、神社の伝統的なお祭りとも深く関わっている言葉なんですね。
現代では法的な区分としては消滅しましたが、神社の行事予定表などを見ると、今でもこれらの「祭日」の日付に合わせて大きなお祭りが執り行われていることが多いです。
言葉としての法的な効力は失われても、文化としての「祭日」は、神社の境内の中に脈々と受け継がれていると言えるでしょう。
旗日とは?言い換えや死語の扱い

「旗日(はたび)」という言葉、若い方はあまり馴染みがないかもしれませんね。
これは法律用語ではなく、いわゆる「俗称」です。言葉の響きから想像できるように、国旗である「日の丸」と深い関係があります。
かつて、昭和の中頃までは、祝日や祭日になると、どこの家でも玄関先に「日の丸(国旗)」を掲げてお祝いする習慣が当たり前のようにありました。
商店街の軒先には一斉に国旗が掲揚され、バスや路面電車にも小さな国旗が飾られました。
通り全体が紅白の旗で埋め尽くされるその華やかな光景から、「旗が出ている日=お休みの日」ということで、庶民の間で自然と「旗日」と呼ばれるようになったんです。
子供のころは日の丸を掲げる家はあったけど、ここ最近ではほとんど見なくなったわね
掲げる人は思想強めの変な人扱いされる場合もあるからね
掲げるだけで?そのくらい許してあげてよ
また、当時のカレンダーにも大きな影響がありました。
昔のカレンダーの祝日の日付欄には、数字と一緒に「交差した国旗」のイラストが描かれていることが多かったんです。
これにより、まだ字が読めない小さな子供たちでも「あ、旗の絵があるから明日はパパがお休みだ!」と理解できたんですね。
このように、視覚的なイメージと結びついて定着したのが「旗日」という言葉です。
豆知識:現代での使われ方
今では一般家庭で国旗を掲げることは少なくなりましたが、市場関係者や伝統的な商店街、あるいは花柳界などでは、今でも休業日を指す符丁として「旗日」が現役で使われていることがあります。
「次の旗日はいつ?」なんて会話が聞こえてきたら、そこには古き良き日本のコミュニティが残っている証拠かもしれません。粋な響きとして残っているんですね。
しかし、現代の住宅事情(マンションなどで掲揚する場所がない)や、国旗掲揚に対する国民の意識の変化などもあり、街中で「旗日」の実景を見ることは少なくなりました。
そのため、言葉としても「死語」になりつつあるのが現状です。
それでも、昭和を舞台にした映画や小説、あるいは年配の方との会話の中では頻出する言葉ですので、教養として「旗日=祝日」と変換できるようにしておくと素敵ですね。
日本の伝統文化を守るためにも祝日に国旗を掲げる人が増えてほしいね
私は絶対に変な人扱いしないから安心してね♪
カレンダーの赤い日の正しい呼び方

私たちが普段目にしているカレンダーの赤い日。これを指す言葉として最も適切なのは、やはり「国民の祝日」あるいは単に「祝日」です。
しかし、カレンダーには「祝日」以外にも赤く塗られている日や、休みになる日が存在します。ここを正確に理解しておくことは、大人の常識として意外と重要なんです。
まず、最もややこしいのが「振替休日」の存在です。
法律では「『国民の祝日』が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い『国民の祝日』でない日を休日とする」と定められています。
簡単に言えば、祝日が日曜と重なると、その翌日の月曜日が休みになるアレです。
カレンダー上では日曜日も月曜日も赤くなっていますが、日曜日は「祝日」、月曜日は「振替休日(ただの休日)」という扱いになり、厳密には法的なステータスが異なります。
次に、ゴールデンウィークやシルバーウィークにたまに出現する「国民の休日」です。
これは通称「オセロルール」とも呼ばれ、「祝日と祝日に挟まれた平日は休日になる」という規定によって生まれる休みです。
例えば、9月の敬老の日と秋分の日が1日おきに並んだ場合、その間の平日が自動的に休みになります。この日も、固有の名前を持つ「祝日」とは区別され、あくまで「休日」として扱われます。
祭日が廃止された理由と現在の扱い

なぜ、あんなに大切にされていた「祭日」という言葉が、公式には消えてしまったのでしょうか。そこには、戦後の大きな時代の変化と、日本の伝統を守ろうとした人々の知恵がありました。
1945年の敗戦後、日本を占領したGHQ(連合国軍総司令部)は、「神道指令」を発出し、国家神道を解体しようとしました。
GHQは、国家が特定の宗教(神道)を支援したり、国民に強制したりすることを厳しく禁じました。
これにより、皇室の私的な宗教行事である「祭日」を、そのまま国の休日として継続することは法的に不可能となったのです。
つまり、「神様のお祭りだから国民も休みましょう」というロジックが通じなくなったわけですね。
しかし、ここで面白いのが日本の文化のしなやかさです。日本側は、長年国民に親しまれてきた休日をなんとか残したいと考えました。
そこで行われたのが、日付はそのままで、名称と趣旨を民主的なものに書き換えるという「読み替え」の作業です。
祭日から祝日への変化の例
- 新嘗祭(11/23) → 勤労感謝の日
天皇が収穫を感謝する日から、国民がお互いの勤労と生産を感謝し合う日へ。 - 春季皇霊祭(春分日) → 春分の日
歴代天皇の霊を祀る日から、自然をたたえ生物をいつくしむ日へ。 - 明治節(11/3) → 文化の日
明治天皇の誕生日から、平和と文化を尊重する日へ。
このように、「祭日」という法的区分はなくなりましたが、その日に込められた季節感や、自然・祖先への感謝の心は、現代の「祝日」の中に形を変えてひっそりと息づいているんですね。
例えば「春分の日」にお墓参りをする習慣は、かつての「皇霊祭」の精神が形を変えて庶民の中に残っている証拠とも言えます。
だからこそ、年配の方が今でも「祭日」と呼ぶのは、単なる間違いではなく、ある意味で歴史的な記憶に基づいているとも言えるんです。
現代の「勤労感謝の日」に、神社では今でも厳かに「新嘗祭」が行われていることを知ると、祝日の深みがぐっと増しますよね。
ビジネスでの祝日や祭日と旗日の違い
さて、ここからは少し実用的なお話です。仕事をしていると、取引先へのメールや社内の勤怠管理で、休みの日の扱いについて悩むことがありますよね。
「たかが言葉の違い」と思っていると、思わぬマナー違反になったり、お給料の計算で損をしてしまったりするかもしれません。
ビジネスパーソンとして知っておきたい「大人の常識」を解説します。
メールでの祝日と祭日の使い分け

ビジネスメールにおいて、「祭日」や「旗日」という言葉を使うのは、基本的には避けたほうが無難です。
先ほどお話しした通り、「祭日」は宗教的な意味合いが強く、現在は法的根拠もありません。また、「旗日」は俗語なので、ビジネスの場にはそぐわない軽い印象を与えてしまう可能性があります。
オフィシャルな文書やメールでは、「祝日」または「国民の祝日」と書くのが唯一の正解です。
例えば、ゴールデンウィークの休業案内を出す際も、「祭日のため休業いたします」ではなく、「祝日のため休業いたします」とするのがスマートです。
メール文面のNG例とOK例
✖ NG:「祭日のところ申し訳ありません」
(相手によっては「古臭い」「教養がない」と思われるリスクがあります)
✔ OK:「祝日のお休みのところ申し訳ありません」
(誰に対しても失礼がなく、正確な表現です)
ただし、言葉というのは生き物です。相手がかなり年配の方や、伝統的な業界(例えば呉服業界や建設業界の親方など)の方の場合、相手が日常的に「祭日」という言葉を使っていることがあります。
その場合は、あえてこちらも「祭日はゆっくりされましたか?」と相手の語彙に合わせるのも、コミュニケーションの潤滑油としてアリかな、と私は思います。
マナーの基本は「相手への配慮」ですから、TPOに合わせて柔軟に使い分けられると素敵ですね。
文書で使う吉日の正しい表記ルール

「祝日」とは少し違いますが、招待状や挨拶状の日付でよく見る「吉日(きちじつ)」という言葉。これもビジネスでは使いどころに厳格なルールがあるのをご存知でしょうか。
「◯月吉日」という表記は、結婚式の招待状や、事務所移転の挨拶状、お祝いのメッセージなど、いわゆる「儀礼的な文書」には使えます。
「良い日を選んでこの手紙を出しましたよ」という奥ゆかしい表現として機能するからです。
しかし、契約書、請求書、納品書、領収書など、法的な効力や支払い期限が発生する文書には絶対に使ってはいけません。
理由は単純で、「いつ作成されたのか」「いつまでに支払えばいいのか」という具体的な日付が特定できなくなってしまうからです。
万が一のトラブルの際に、「吉日」では証拠能力として弱くなってしまいます。
よくある間違い:「日付+吉日」の併記
「2025年12月10日吉日」のように、具体的な日付と「吉日」を混ぜて書くのは間違いです。これは文法的におかしい表現とされています。
日付を特定する必要があるなら「2025年12月10日」、ぼかして良い儀礼的な文書なら「2025年12月吉日」と、どちらか一方を使うようにしましょう。
振替休日と代休で給料はどう変わる

ここは働く私たちにとって一番気になるポイントかもしれません。
「振替休日」と「代休」。言葉は似ていますが、労働基準法やお給料の計算においては、天と地ほどの差がある全く別の制度なんです。
ここを混同していると、知らず知らずのうちに損をしてしまうかもしれません。
| 種類 | 仕組みと定義 | 休日割増賃金(35%増) |
|---|---|---|
| 振替休日 (ふりかえきゅうじつ) | 事前に休日と労働日を交換する手続き。 「来週の日曜日は出勤して、代わりに水曜日を休みにします」と前もって決めること。 | 発生しない (日曜日の労働は「平日扱い」になるため、通常の賃金のみ) |
| 代休 (だいきゅう) | 休日に労働させた後で、代わりの休みを与えること。 「日曜日に急に出勤したから、代わりに水曜日休んでいいよ」という事後処理。 | 発生する (日曜日に働いた事実は変わらないため、35%の割増分は必ず支払われる必要がある) |
ポイントは「事前か、事後か」です。「振替休日」は、事前に休日を移動させているので、もともとの休日に働いても、それは法律上「平日勤務」扱いになります。そのため、休日割増賃金は発生しません。
一方、「代休」は「本来の休日に働いてしまった」という事実は消えないので、後で休んだとしても、休日働いた分の割増賃金(35%上乗せ分)は支払われる権利があるんです。
もし会社から「代休取ったから割増賃金はなしね」と言われたら、それは間違い(違法)の可能性が高いです。自分の給与明細をしっかりチェックして、疑問があれば就業規則を確認してみることをおすすめします。
銀行や病院は祝日に営業しているか

カレンダーが赤い日のとき、生活インフラがどうなっているかも気になりますよね。特に急用ができたとき、「今日は祝日だけど開いているのかな?」と焦った経験は誰にでもあると思います。
まず銀行ですが、銀行法という法律で「国民の祝日は休日とする」とはっきりと決められています。そのため、銀行の窓口は祝日は基本的にお休みです。
ただし、ATMに関しては多くの銀行で稼働しています。ここで注意したいのが手数料です。祝日のATM利用は、ほとんどの場合「休日手数料」が適用され、平日よりも高くなるケースが一般的です。
少しでも節約したいなら、平日のうちに現金を引き出しておくのが賢明ですね。
次に病院です。大学病院や公立病院などの大きな総合病院は、祝日は外来がお休み(休診)になるのが一般的です。救急外来は受け付けていますが、通常の外来受診はできないと思っておいたほうが良いでしょう。
一方で、個人経営のクリニックや歯科医院の中には、祝日に診療を行っているところも増えています。特に、平日は仕事で忙しい会社員をターゲットに、あえて祝日を開けている医院もあります。
ただし、これらは「休日加算」といって、診療報酬が少し高くなる場合があります。いざという時のために、近所の病院の「休診日」や「休日当番医」の情報をチェックしておくのが安心かなと思います。
祝日や祭日と旗日の違いの総まとめ

ここまで、祝日、祭日、旗日の違いについて、歴史やビジネスルールを交えて詳しく見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
- 祝日:現在の法律に基づく正式名称。国民みんなでお祝いし、感謝する日。ビジネスではこれを使うのが正解。
- 祭日:戦前の名称。皇室の祭祀(儀式)が行われる宗教的な日。現在は法的には存在しないが、文化としては残っている。
- 旗日:国旗を掲げる習慣から生まれた俗称。今はあまり使われないが、特定の業界では現役。
言葉の違いを紐解いていくと、単なる呼び名の問題ではなく、日本が「神事中心の時代」から「国民主権の時代」へと移り変わってきた歴史そのものが見えてきます。
ビジネスシーンでは、マナーとして「祝日」を使うのが基本です。
でも、誰かがふと「今日は祭日だね」と言ったとき、それを単に間違いだと否定するのではなく、「あぁ、昔はこの日に神様のお祭りが行われていたんだな」「ご先祖様たちは、この日に国旗を掲げてお祝いしていたんだな」と、心の中で思いを馳せてみるのも素敵ですよね。
そんな風に、言葉の向こう側にある日本の伝統文化を感じ取れる人が増えれば、これほど嬉しいことはありません。