新嘗祭とは？わかりやすく新米と勤労感謝の日も交えて解説

こんにちは。神社と日本の伝統文化、運営者の「月影」です。

毎年11月23日になると、「勤労感謝の日」としてお休みになりますが、この日がもともと「新嘗祭（にいなめさい）」というとても大切な日だったことをご存知ですか？

「新嘗祭とは？」と調べてみると、天皇陛下が何かをされているらしい、新米と関係があるらしい、でも具体的に何をする日で、私たちとどう関係があるのか、わかりやすく知りたいなと思いますよね。

また、この新嘗祭の読み方や由来、歴史を調べていくと、必ずと言っていいほど「大嘗祭（だいじょうさい）」や「神嘗祭（かんなめさい）」といった似た言葉が出てきて、その違いがよく分からなくなってしまうこともあるかなと思います。

さらに、なぜ日本の大切な収穫祭だったはずの日が、戦後にGHQの意向で「勤労感謝の日」という名前に変わったのか、その背景も気になるところです。

この記事では、そんな「新嘗祭」について、その核心である「新米」への感謝という視点から、わかりやすく紐解いていきます。読み終わる頃には、勤労感謝の日や、普段私たちが口にするお米への見方が、少し変わるかもしれませんよ。

新嘗祭とは何かわかりやすく解説｜新米と感謝の心

11月23日に行われる「新嘗祭」。この日は、私たちにとって「勤労感謝の日」としてお馴染みですが、そのルーツには日本の稲作文化と深く結びついた、とても神聖な儀式があります。

ここでは、新嘗祭の基本的な意味や歴史、そして儀式の中心となる「新米」との関係について、わかりやすく見ていきましょう。

新嘗祭の読み方と基本的な意味

まず、読み方ですが、これは「にいなめさい」と読むのが一般的です。宮中祭祀の文脈などでは「しんじょうさい」と呼ばれることもありますね。

この「新嘗祭」という言葉、漢字を分解してみると、その意味がとても分かりやすくなるんです。

• 「新（にい）」：その年に収穫された新しい穀物、つまり「新穀」のこと。「新米（しんまい）」がその代表ですね。
• 「嘗（なめ）」：「味わう」「ご馳走としていただく」という意味を持つ古い言葉です。舐（な）める、とも語源が近いと言われています。

つまり、新嘗祭とは「新しい穀物（特に新米）を神様と共に味わうお祭り」であり、その年の豊かな収穫を神々に感謝し、「今年も無事にこれだけの恵みをいただきました」と報告すると共に、来年もまた豊かな実りがあるようにと祈願する、大切な儀式なんですね。

これは、皇居の中だけで行われる特別な儀式というだけではなく、皇室の御祖先である天照大御神が祀られる伊勢神宮をはじめ、私たちにとって身近な全国の神社でも、「秋祭り」や「収穫感謝祭」として行われています。

いつ行う？新嘗祭の日程は11月23日

新嘗祭は、毎年11月23日に行われます。この日付は現在、「勤労感謝の日」という国民の祝日になっていますね。

もともとは、旧暦（月の満ち欠けを基準にしたカレンダー）の11月（霜月）の「二の卯（う）の日」に行われていたそうです。旧暦ベースだったので、毎年日付が変わっていました。

それが明治時代に入って、太陽の動きを基準にする新暦（太陽暦）が採用された際に、1873年（明治6年）から11月23日に固定化されました。

なぜこの日になったのかは諸説ありますが、ちょうどこの時期は、日本全国でその年の新米が出揃い、収穫の喜びを誰もが実感できるタイミングでもあります。

新嘗祭の由来と神話の起源

新嘗祭の起源は本当に古く、日本の成り立ちを記した神話の時代にまで遡ります。

『古事記』や『日本書紀』といった神話の中には、皇室の御祖先とされる太陽の神・天照大御神（あまてらすおおみかみ）が、天上の世界である「高天原（たかまがはら）」で、自ら育てた稲の新穀を味わう儀式（新嘗祭）を行った、という記述があるんです。

さらに、天照大御神が孫のニニギノミコトを地上の日本（葦原中国）に降臨させる「天孫降臨（てんそんこうりん）」の際、「私が高天原で食べている稲を、地上でも育てて食べなさい」と稲穂を授けたとされています。

この神話から、地上の天皇陛下が行う新嘗祭は、この天上の神々の世界の儀式を、地上で正確に再現する神聖な行為として位置づけられています。

天皇陛下が新米を神々と共に食べることは、日本の稲作文化の始まりそのものと直結する、国の根幹をなす祈りの儀式なんですね。

この神話の時代から続く収穫儀礼が、国家の公式な行事として確立されたのは奈良時代（8世紀）頃とされ、平安時代（8世紀から12世紀）には宮中の重要な年間行事として定着していたそうです。

それほど古くから、途切れることなく大切に受け継がれてきたことが分かります。

何をする？天皇陛下が行う神人共食

では、具体的に新嘗祭では何をするのでしょうか。儀式の中心は、皇居の中にある「神嘉殿（しんかでん）」という、新嘗祭のためだけに使われる神聖な建物で、天皇陛下ご自身によって執り行われます。これは一般には公開されない、とても神聖な儀式です。

前日に行われる「鎮魂祭（ちんこんさい）」

新嘗祭は非常に重要で、天皇陛下にとっても大変な儀式であるため、その前日（11月22日）には「鎮魂祭（ちんこんさい・みたましずめのまつり）」という儀式が行われます。

これは、神聖な儀式に臨む天皇陛下の霊（たましい）を強め、活力を高め、万全の状態で神々と向き合えるようにするための、大切な準備の儀式とされているんですよ。

当日の儀式：夕御饌（ゆうみけ）と朝御饌（あさみけ）

そして11月23日の夕方（午後6時頃）から夜にかけて、新嘗祭の核心となる儀式「夕御饌（ゆうみけ）の儀」が始まります。

天皇陛下は純白の御祭服をまとい、神嘉殿に入られます。そこには、その年に収穫された新米や粟（あわ）を炊いたご飯、そして新米から醸造された白酒（しろき）・黒酒（くろき）といった神饌（しんせん）が用意されています。

天皇陛下はまず、天照大御神をはじめとする天地すべての神々（天神地祇）に、これらの神饌を自らお供えになります。そして、収穫の感謝を伝える「御告文（おつげぶみ）」を奏上されます。

儀式の核心「神人共食（しんじんきょうしょく）」

そして、この儀式の最大のポイントが「神人共食（しんじんきょうしょく）」です。これは文字通り「神と人が、共に食事をする」という意味。天皇陛下は、神々に捧げたものと全く同じ新米（ご飯や粟飯）や神酒を、ご自身も召し上がります。

神様と同じものを食べ、飲むことを通じて、天皇陛下は神々と一体となり、神々の力をその身に受けて、私たち国民のための来年の五穀豊穣を祈願されるのです。

この神聖な儀式は、夕方の「夕御饌の儀」が終わった後、さらに深夜（午後11時頃）から「朝御饌（あさみけ）の儀」として、全く同じ内容が二度にわたって繰り返されます。夜を徹して行われる、非常に重要なお祭りであることが伝わってきますね。

捧げるものは新米と五穀

新嘗祭の中心にある供物は、もちろん「新米」です。天皇陛下ご自身が皇居内の水田でお育てになった稲も含まれています。

ですが、儀式では新米だけでなく、より広く「五穀（ごこく）」の収穫が感謝されます。「五穀」という言葉は時代や地域によって中身が変わることもありますが、古来の日本の主食や作物全体を象徴するものとして、以下のようなものが含まれることが多いです。

• 米
• 麦
• 粟（あわ）
• 黍（きび）
• 豆（大豆や小豆）

これらの新穀は、神々への供物「神饌（しんせん）」として、蒸したご飯（御飯）やお粥（御粥）といった形のほか、特別な形に変えて捧げられます。

特に重要なのが、新米から醸造される二種類の神聖なお酒、「白酒（しろき）」と「黒酒（くろき）」です。

これらは現代の日本酒（清酒）とは異なり、古代の製法に則って作られる特別なお酒（御神酒）です。

「黒酒」は、白酒に「久佐木（くさぎ）」という植物の灰を加えて黒く色付けしたもので、米が持つ生命力が凝縮された供物と考えられています。

儀式では、これらの五穀や神酒のほかにも、日本各地から献上された新鮮な魚介類、海藻、野菜、果物といった「山海の幸」が捧げられ、神々への盛大な感謝の宴が整えられるんですね。

新嘗祭とは？わかりやすく知る新米と祝日

さて、新嘗祭がこれほど重要なお祭りであるにもかかわらず、私たちにとって11月23日といえば「勤労感謝の日」ですよね。なぜ「新嘗祭」という名前の祝日ではないのでしょうか？

そこには、戦後の歴史が深く関わっています。また、この機会に、よく似た名前の「大嘗祭」や「神嘗祭」との違いもスッキリ整理しておきましょう。

勤労感謝の日との関係とGHQの意図

私たちになじみ深い「勤労感謝の日」ですが、実はこの祝日は、新嘗祭と深い関係があります。

戦前の日本では、11月23日は「新嘗祭」という名前の祝祭日（国民の祝日）でした。天皇陛下が国民の代表として収穫を感謝する、国家にとって非常に重要な日とされていたんです。

ところが、第二次世界大戦での敗戦後、日本はアメリカを中心とする連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の占領下に置かれます。GHQは、日本の民主化・非軍事化政策の一環として、天皇を神格化し、国家と神道を一体化させていた戦前の「国家神道」の解体を進めました。

GHQによる祝日の変更

GHQは、「新嘗祭」という祝日が天皇の宗教的儀式と直結しており、「国家神道的色彩が強い」と問題視したんですね。そのため、新しい憲法（日本国憲法）の政教分離の原則にもとづき、この祝日のあり方を見直す必要が出たのです。

1948年（昭和23年）に「国民の祝日に関する法律」が制定される際、GHQの意向を受け、天皇の祭祀と直結する「新嘗祭」は、国民の祝日の名称からは除外されることになりました。

しかし、古くから続く11月23日の祝日を単に廃止してしまうと、国民の生活や感情に大きな影響が出ると予想されました。そこで、同じ日付のまま、全く新しい世俗的な祝日が作られました。それが、「勤労感謝の日」です。

「勤労感謝の日」の趣旨は、法律で「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」ことと定められました。（出典：国民の祝日に関する法律 - e-Gov 法令検索）

これにより、感謝の対象が「神々」から「働く人々（国民同士）」へと、その意味合いが意図的に変更されたのです。農業の収穫感謝（新嘗祭）から、農業を含む全ての産業の「勤労」と「生産」への感謝（勤労感謝の日）へと、祝日の意味が作り替えられました。

この結果、現代の11月23日には、皇居で古代から続く「新嘗祭」が（現在は皇室の私的な祭祀として）大切に執り行われ、一方で国民は世俗的な「勤労感謝の日」として、日々の労働と生産に感謝する一日を過ごす、という二重の構造が生まれているわけですね。

大嘗祭との違いは？一世一代の儀式

新嘗祭と聞いて、「あれ？大嘗祭（だいじょうさい）と何が違うの？」と思う方も多いかもしれません。私も最初は混乱しました。この二つは密接に関連していますが、決定的な違いがあります。

違いはとても明確です。

• 新嘗祭（にいなめさい）：毎年11月23日に行われる、定例の収穫感謝祭。
• 大嘗祭（だいじょうさい）：天皇陛下が即位した後、一世一代（その御代で一度きり）だけ行われる、最も重要で盛大な新嘗祭。

つまり、大嘗祭は「即位後、最初に行う、特別な新嘗祭」ということです。この儀式のためだけに、皇居にはその都度、特別な「大嘗宮（だいじょうきゅう）」という大規模な建物群が建てられます（儀式が終わると解体されます）。

新しい天皇陛下が、即位後初めて神々と「神人共食」を行うことで、天皇としての霊威をその身に受け、その地位を確立するという、皇位継承において最も重要な儀式の一つとされているんですよ。

神嘗祭との違いは？伊勢神宮の祭り

もう一つ、よく似た名前に「神嘗祭（かんなめさい）」があります。これも新米に関わる重要なお祭りですが、新嘗祭とは時期と場所、対象が異なります。

• 時期：毎年10月（10月15日～17日頃。新嘗祭より早い）
• 場所：伊勢神宮
• 内容：その年に収穫された「初穂（その年一番最初の稲穂）」を、皇室の御祖先であり、日本国民の総氏神とされる天照大御神に捧げるお祭り。

「神嘗祭」は、「神様（特に天照大御神）に、誰よりも先に新米を召し上がっていただく」という意味合いが強い儀式です。伊勢神宮では「神宮の正月」とも呼ばれるほど重要なお祭りなんですよ。

これに対して「新嘗祭」は、神嘗祭で天照大御神に捧げた後、11月に天皇陛下が天地すべての神々（天神地祇）に新穀を捧げて感謝し、ご自身も「共に食す（神人共食）」儀式、という流れになっています。

時系列的にも意味合い的にも、神嘗祭が先、新嘗祭が後、と覚えると分かりやすいかもしれませんね。

3つのお祭りの整理

ここで、3つのお祭りを簡単に整理してみましょう。どれも新米（新穀）に関わる重要なお祭りですが、こうしてみると違いが明確かなと思います。

特徴	神嘗祭（かんなめさい）	新嘗祭（にいなめさい）	大嘗祭（だいじょうさい）
時期	毎年10月	毎年11月23日	天皇即位後、一度きり
場所	伊勢神宮	皇居（神嘉殿）	皇居（特設の大嘗宮）
対象	天照大御神（中心）	天神地祇（すべての神々）	天神地祇（すべての神々）
儀式	新米を「捧げる」（初穂奉納）	神と新米を「共に食す」	即位後初の「共に食す」
位置づけ	初穂の奉納（神様へ先に）	毎年の収穫感謝祭	一世一代の皇位継承儀礼

上記はあくまで概要を掴むための簡単な比較です。実際の儀式は非常に複雑で神聖なものです。

神社での新嘗祭と私たちの関わり

新嘗祭は、皇室の特別な儀式であると同時に、私たち自身の生活や、地域の神社とも深く関わるお祭りです。

11月23日には、全国の多くの神社で新嘗祭（または「収穫感謝祭」「秋祭り」「新穀感謝祭」といった名前）が斎行されています。

地元の神社（氏神様）に参拝し、「今年も無事にご飯を食べられています、ありがとうございます」と、日々の糧を得られていること、一年間無事に過ごせたことへの感謝を伝えてみるのも、とても素敵なことかなと思います。

神社によっては、新米で作ったお餅や御神酒が振る舞われるところもありますよ。

家庭での神棚のお供え

ご家庭に神棚がある場合は、新嘗祭の日（勤労感謝の日）に、ぜひ特別なお供えをして、収穫の感謝を伝えてみてください。

基本のお供えである「米・塩・水」は毎日取り替えるのが理想ですが、この日は特に、

• 新米：その年に収穫された「新米」（炊いたご飯でも、稲穂のままでも良いです）
• 日本酒（御神酒）：できれば新米から作られた「新酒」
• その他：その季節の初物の野菜や果物など

これらをお供えし、二拝二拍手一拝の作法で、日々の恵みへの感謝を伝えます。神棚がないご家庭でも、食卓で新米をいただく際に、心の中で「いただきます」と共に感謝の気持ちを持つことが大切かなと思います。

総括：新嘗祭とは何かを新米を交えてわかりやすく解説

ここまで「新嘗祭とは何か」を、わかりやすく新米との関係から見てきました。

皇室の神聖な儀式や、祝日の歴史的背景など、少し難しい話もあったかもしれませんが、新嘗祭の根底にあるのは、とてもシンプルで大切な「感謝」の心だと思います。

私たちの命を支える「食」。それをもたらしてくれる太陽や水、大地といった自然の恵み。そして、お米を作ってくれる農家の方々をはじめ、私たちの食卓に届くまでに関わった全ての「労働（勤労）」に改めて思いを馳せる日。

そう考えると、新嘗祭の「収穫への感謝」と、勤労感謝の日の「労働への感謝」は、根本の部分で深くつながっているように感じますね。

新嘗祭の精神に触れる最もシンプルで、最も本質的な方法は、やはり「新米（しんまい）を感謝して食べる」ことではないでしょうか。

ちょうど新米が出揃うこの時期。11月23日の勤労感謝の日には、ぜひその年の「新米」を意識して食卓にのせてみてください。

天皇陛下が神々と共に行う「神人共食」の精神に倣い、私たちは、このお米がここにある奇跡と、多くの人々の働きに感謝しながら、その年の最初の味をいただくのです。

いつもより少し丁寧に、土鍋でご飯を炊いてみるのも、お米本来の旨味を最大限に引き出せて、特別な感謝の気持ちが湧いてくるかもしれませんね。