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二十四節気と七十二候とは?合計96種類の日本の暦を全て紹介

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二十四節気と七十二候

こんにちは。神社と日本の伝統文化、運営者の「月影」です。

ふとカレンダーを見たときや、天気予報で「暦の上では」という言葉を耳にしたとき、季節の変わり目を意識することはありませんか。

忙しい現代社会で暮らしていると、どうしても日々のタスクに追われて、空の色や風の匂いの変化を見落としてしまいがちです。

私自身、以前はただなんとなく毎日を過ごしていましたが、二十四節気や七十二候といった日本の暦に触れるようになってから、日常の解像度がぐっと上がったような感覚を覚えています。

この素晴らしい季節の指標は、単なる古い言葉の羅列ではなく、自然と調和して心豊かに暮らすためのヒントが詰まった宝箱のようなものです。

今回は、この奥深い暦の世界について、初めての方にも分かりやすくご紹介していきたいと思います。

この記事でわかること

  • 二十四節気と七十二候の基本的な違いとそれぞれの役割
  • 太陽の動きによって決まる暦の仕組みと日付の変動
  • 春夏秋冬ごとの節気と七十二候の全解説と季節の楽しみ方
  • 季節感あふれる時候の挨拶や旬の食材を取り入れるヒント

二十四節気と七十二候の基礎知識と仕組み

ここでは、まず「そもそも二十四節気や七十二候って何?」という基本的な疑問から、その成り立ちや仕組みについて紐解いていきます。

名前は聞いたことがあっても、具体的な定義や違い、そしてなぜそれが現代の私たちにも役立つのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。

二十四節気と七十二候の違いや意味

二十四節気と七十二候の違いや意味
神社と日本の伝統文化・イメージ

日本の暦には、季節を知るための美しい物差しがあります。それが「二十四節気(にじゅうしせっき)」「七十二候(しちじゅうにこう)」です。

これらは、月の満ち欠けを基準とした「太陰暦」を使っていた時代に、季節とのズレを補正するために古代中国で考案され、日本に伝わって独自の発展を遂げました。

まず二十四節気とは、1年を24等分して、それぞれの季節に名前をつけたものです。約15日ごとに新しい節気が訪れるため、「半月ごとの季節の目安」と考えると分かりやすいですね。

春分や夏至、冬至といった馴染み深い言葉も、実はこの二十四節気の一つなんです。これらは季節の大きな節目を表し、農作業や行事の目安として古くから重宝されてきました。

一方、七十二候は、二十四節気をさらに3つ(初候・次候・末候)に分けたものです。こちらは約5日ごとに変化します。

「カエルが鳴き始める」「桃の花が咲く」といったように、気象の動きや動植物の変化(フェノロジー)を短い言葉で表現しているのが特徴です。

それぞれの役割の違い

  • 二十四節気(約15日間隔):天体の動きに基づいた、大きな季節の区切り。「立春」「夏至」など、季節の変わり目を告げるシグナル。
  • 七十二候(約5日間隔):自然界の微細な変化を捉えた、きめ細やかな季節の描写。「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」など、五感で感じる風景のスケッチ。

二十四節気は中国で生まれたものがそのまま使われていますが、七十二候は日本の気候風土に合わせて、江戸時代の天文暦学者・渋川春海らによって改訂された「本朝七十二候」がベースになっています。

中国の気候と日本の気候は異なるため、日本の植物や動物の動きに合わせて書き換えられたのです。だからこそ、日本の私たちの肌感覚にしっくりくる表現が多いのですね。

カレンダーの日付が決まる太陽の動き

カレンダーの日付が決まる太陽の動き
神社と日本の伝統文化・イメージ

「毎年、立春の日付が変わることがあるのはなぜ?」と不思議に思ったことはありませんか。実は、これらの暦は太陽の動き(黄道)を基準に決められているんです。

二十四節気は、太陽が地球の周りを回る通り道である「黄道」を360度とし、それを15度ずつ24等分して決められます。これを「定気法」と呼びます。

例えば、太陽が黄経315度の位置に来た瞬間を含む日が「立春」、0度の時が「春分」、90度が「夏至」といった具合です。

日付がずれる理由

地球が太陽の周りを一周するには、厳密には365日ちょうどではなく、約365.2422日かかります。この「約6時間」の端数が毎年積み重なり、4年に一度のうるう年で調整されますが、それでも微妙なズレが生じます。

そのため、二十四節気の日付は固定ではなく、年によって1日前後することがあるのです。

私たちが普段使っているカレンダー(グレゴリオ暦)とは異なる基準で動いているため、毎年国立天文台が精密な計算を行い、その結果として「暦要項」が発表され、正式な日付が決定されます。

自然のリズムは機械的ではないということを、暦が教えてくれているようですね。

正確な日付やその年の暦の情報については、以下の公式サイトで確認することができます。

(出典:国立天文台 暦計算室『暦要項』

難しい漢字の読み方と覚え方

難しい漢字の読み方と覚え方
神社と日本の伝統文化・イメージ

暦を見ていると、「啓蟄(けいちつ)」や「芒種(ぼうしゅ)」など、普段あまり見かけない難しい漢字が登場しますよね。

これらを丸暗記するのは大変ですが、漢字の意味をイメージすると驚くほど覚えやすくなりますし、その背景にある情景が浮かんできます。

代表的な難読節気の意味

  • 啓蟄(けいちつ):「啓」は開く、「蟄」は土に隠れて冬ごもりしている虫を指します。つまり「春の暖かさを感じて、冬眠していた虫たちが戸を開いて出てくる頃」という意味です。
  • 芒種(ぼうしゅ):「芒(のぎ)」とは、イネや麦などの植物の穂先にある針のような突起のこと。転じて「稲や麦など、芒のある穀物の種まきをする頃」を表しています。
  • 処暑(しょしょ):「処」には「落ち着く」「止まる」という意味があります。つまり「暑さが峠を越し、ようやく落ち着く頃」を示しています。
  • 小満(しょうまん):陽気が良くなり、万物が成長して天地に満ち始めること。また、麦の穂が育ち、農家が少し安心(満足)することから名付けられたとも言われています。

このように、文字そのものが季節の情景を切り取った写真のようになっています。

難しい言葉として捉えるのではなく、「昔の人はこの時期の風景をこう表現したんだな」「虫が出てくる様子を『啓く』と書くなんて素敵だな」と想像力を膨らませてみると、親しみが湧いてくるかと思います。

二十四節気と七十二候の季節別一覧と解説

ここからは、実際に1年を彩る二十四節気と七十二候を季節ごとに、すべて詳しく見ていきましょう。それぞれの時期の特徴や、その時期ならではの自然の変化を知ることで、毎日の暮らしがより味わい深いものになるはずです。

春の節気一覧と季節の移ろい

春の節気一覧と季節の移ろい
神社と日本の伝統文化・イメージ

春は「発生」の季節です。陰の気が極まり、そこから徐々に陽の気へと転じていくエネルギーに満ちた時期。

暦の上では2月初旬の「立春」からスタートし、寒さの中にも微かな春の兆しが見え始め、やがて百花繚乱の季節へと移ろいでいきます。

立春(りっしゅん):2月4日頃

旧暦では一年の始まりとされる重要な日です。寒さはまだ厳しいですが、日脚は徐々に伸び、春の気配が立ち始めます。「八十八夜」などの雑節も、この立春を基準(1日目)として数えられます。

初候東風解凍(はるかぜこおりをとく)春の風(東風)が吹き、厚い氷を解かし始める頃。
次候黄鶯睍睆(うぐいすなく)山里でウグイスが鳴き始める頃。「春告鳥」の初音が響きます。
末候魚上氷(うおこおりをいずる)水がぬるみ、割れた氷の間から魚が飛び跳ねる頃。

雨水(うすい):2月19日頃

空から降るものが雪から雨へと変わり、積もった雪が解けて水になる時期です。大地が潤い始め、農耕の準備の目安とされます。この時期に雛人形を飾ると良縁に恵まれるとも言われています。

初候土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)冷たい雪が雨に変わり、大地が湿り気を帯びてくる頃。
次候霞始靆(かすみはじめてたなびく)春霞がたなびき、遠くの景色がぼんやりと見える頃。
末候草木萌動(そうもくめばえいずる)草木の芽が吹き出し、足元が薄緑に色づき始める頃。

啓蟄(けいちつ):3月6日頃

大地が暖まり、冬眠していた虫たちが穴から出てくる頃です。一雨ごとに暖かくなり、柳の若芽が芽吹くなど、植物の活動も活発になります。

初候蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)冬籠りの虫たちが戸を開いて地上へ這い出してくる頃。
次候桃始笑(ももはじめてわらう)桃の蕾が開き、花が咲き始める頃。「笑う」は「咲く」の意。
末候菜虫化蝶(なむしちょうとなる)青虫が羽化してモンシロチョウとなり、舞い始める頃。

春分(しゅんぶん):3月21日頃

昼と夜の長さがほぼ等しくなる日です。この日を境に昼の時間が長くなり、本格的な暖かさが訪れます。「自然をたたえ、生物をいつくしむ」国民の祝日でもあり、お彼岸の中日として先祖を供養する日でもあります。

初候雀始巣(すずめはじめてすくう)スズメが枯草や毛を集めて巣作りを始める頃。
次候桜始開(さくらはじめてひらく)桜(ソメイヨシノ)の花が咲き始める頃。
末候雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)遠くで春の雷(春雷)が鳴り始める頃。

清明(せいめい):4月5日頃

「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」の略語で、万物が清らかで生き生きとして見える頃です。花が咲き乱れ、若葉が萌え、春の美しさが最高潮に達します。

初候玄鳥至(つばめきたる)南の国からツバメが海を渡って日本にやってくる頃。
次候鴻雁北(こうがんかえる)冬を日本で過ごした雁が、北のシベリアへ帰っていく頃。
末候虹始見(にじはじめてあらわる)雨上がりに空気が澄み、きれいな虹が見え始める頃。

穀雨(こくう):4月20日頃

「百穀を潤す雨」の意味。田畑の土が整い、種まきに最適な柔らかい春雨が降る時期です。農作業が本格化し、穀物の成長を助けます。八十八夜(5月2日頃)もこの期間に含まれます。

初候葭始生(あしはじめてしょうず)水辺の葭(あし/よし)が芽吹き始める頃。
次候霜止出苗(しもやみてなえいずる)霜が降りなくなり、稲の苗がすくすくと育つ頃。
末候牡丹華(ぼたんはなさく)百花の王である牡丹が大輪の花を咲かせる頃。

夏の節気一覧と行事や風習

夏の節気一覧と行事や風習
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夏は「成長」の季節。新緑から深い緑へと変わり、万物がぐんぐんと育っていきます。梅雨という日本特有の雨の季節を挟み、その後、強烈な太陽の季節がやってきます。

立夏(りっか):5月6日頃

暦の上での夏の始まり。新緑がまぶしく、爽やかな風(薫風)が吹き渡る、一年で最も過ごしやすい季節の一つです。

初候蛙始鳴(かわずはじめてなく)田んぼや水辺でカエルが鳴き始める頃。
次候蚯蚓出(みみずいずる)冬眠していたミミズが土の中から這い出してくる頃。
末候竹笋生(たけのこしょうず)竹林でタケノコがひょっこりと顔を出す頃。

小満(しょうまん):5月21日頃

陽気が良くなり、草木が茂って天地に満ち始めるという意味です。秋に撒いた麦が穂をつけ、収穫の時期「麦秋」を迎えます。

初候蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)孵化した蚕が桑の葉を盛んに食べて成長する頃。
次候紅花栄(べにばなさかう)染料となる紅花(ベニバナ)の花が咲き誇る頃。
末候麦秋至(むぎのときいたる)麦が熟し、収穫の時期(麦秋)を迎える頃。

芒種(ぼうしゅ):6月6日頃

稲や麦など、芒(のぎ)のある穀物の種まきをする時期。この時期から梅雨入りすることが多く、蒸し暑さが増してきます。

初候蟷螂生(かまきりしょうず)カマキリが卵から孵化して出てくる頃。
次候腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)腐った草が変化して蛍になると信じられていた頃。
末候梅子黄(うめのみきばむ)梅の実が熟して黄色く色づく頃。梅雨入りの時期。

夏至(げし):6月21日頃

北半球において一年で最も昼の時間が長く、夜が短い日です。太陽の力が最大となりますが、日本は梅雨の最中であることが多く、高温多湿な気候となります。

初候乃東枯(なつかれくさかるる)冬至の頃に芽を出したウツボグサ(乃東)が枯れる頃。
次候菖蒲華(あやめはなさく)アヤメの花が咲き始める頃。
末候半夏生(はんげしょうず)カラスビシャク(半夏)が生える頃。農作業の目安の日。

この時期は、半年の罪穢れを祓う「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神事が全国の神社で行われます。

小暑(しょうしょ):7月7日頃

梅雨が明け始め、本格的な暑さが始まる頃です。「暑中見舞い」を出し始める時期でもあります。

初候温風至(あつかぜいたる)熱気を帯びた南風が吹き始める頃。
次候蓮始開(はすはじめてひらく)蓮の花が咲き始める頃。
末候鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)鷹の雛が飛び方を覚え、巣立ちを迎える頃。

大暑(たいしょ):7月23日頃

一年で最も暑さが厳しい時期。「大暑」の名にふさわしく、猛暑日が続きます。土用の丑の日にウナギを食べるなど、暑気払いの風習があります。

初候桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)桐の木が実を結び始める頃。
次候土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)土が湿り気を帯び、蒸し暑くなる頃。
末候大雨時行(たいうときどきふる)夕立や台風など、激しい雨が降る頃。

秋の節気一覧と旬の食べ物

秋の節気一覧と旬の食べ物
神社と日本の伝統文化・イメージ

秋は「収穫」の季節であるとともに、陽の気が衰え陰の気が増していく「収斂(しゅうれん)」の時期です。空気は澄みわたり、実りの喜びとともに、冬に向かう静けさを感じる季節です。

立秋(りっしゅう):8月8日頃

暦の上での秋の始まり。この日を境に、季節の挨拶は「暑中見舞い」から「残暑見舞い」へと変わります。体感的にはまだ猛暑ですが、空の高さや風の音に微かな秋を感じるようになります。

初候涼風至(すずかぜいたる)涼しい風が立ち始め、秋の気配を感じる頃。
次候寒蝉鳴(ひぐらしなく)ヒグラシが「カナカナカナ」と鳴き始める頃。
末候蒙霧升降(ふかききりまとう)深い霧が立ち込め、幻想的な風景が見られる頃。

処暑(しょしょ):8月23日頃

暑さが峠を越し、朝晩は涼しくなり始める時期です。台風の襲来が多くなる特異日「二百十日」もこの時期に含まれます。

初候綿柎開(わたのはなしべひらく)綿の実を包む萼(がく)が開き、白い綿毛が出てくる頃。
次候天地始粛(てんちはじめてさむし)夏の暑さが静まり、万物が改まる気配を感じる頃。
末候禾乃登(こくものすなわちみのる)稲などの穀物が実り、穂を垂れる頃。

白露(はくろ):9月8日頃

夜間の気温が下がり、朝露が草花に宿って白く光って見える頃です。日中の残暑と朝晩の冷気の差が大きく、体調を崩しやすい時期でもあります。

初候草露白(くさのつゆしろし)草花に降りた朝露が白く光る頃。
次候鶺鴒鳴(せきれいなく)セキレイが鳴き始める頃。
末候玄鳥去(つばめさる)春に来たツバメが南へ帰っていく頃。

秋分(しゅうぶん):9月23日頃

春分と同様、昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。この日を境に夜が長くなり、「秋の夜長」を楽しむ季節になります。お彼岸の中日でもあり、ご先祖様を偲ぶ大切な時期です。

初候雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)夏の間に鳴り響いていた雷が鳴らなくなる頃。空にはうろこ雲が広がります。
次候蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)虫たちが土に潜り、冬ごもりの支度をするために戸を塞ぐ頃。
末候水始涸(みずはじめてかるる)田んぼの水を抜き、稲刈りの準備をする頃。

「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、この時期を過ぎると過ごしやすい気候になります。お供え物の「おはぎ」は、秋に咲く萩の花にちなんで名付けられたものです(春は牡丹にちなんで「ぼたもち」と呼びます)。

寒露(かんろ):10月8日頃

草花に降りる露が冷たく感じられ、秋が深まる頃。空気が澄みわたり、月や星がきれいに見える季節です。農作物の収穫が最盛期を迎えます。

初候鴻雁来(こうがんきたる)北から雁(がん)が渡ってくる頃。その年初めて訪れる雁を「初雁」と呼びます。
次候菊花開(きくのはなひらく)菊の花が咲き始める頃。菊祭りが各地で開催されます。
末候蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)キリギリスなどの秋の虫が戸口で鳴く頃。寒さで人家に近づいてきます。

霜降(そうこう):10月24日頃

露が霜に変わり、朝晩の冷え込みが厳しくなる時期。山々は紅葉で彩られますが、冬のコートを用意するなど、冬支度を始めるタイミングです。

初候霜始降(しもはじめてふる)北国や山間部で初霜が降りる頃。草木が白く化粧をします。
次候霎時施(こさめときどきふる)パラパラと通り雨(時雨)が降る頃。初冬の風情を感じさせます。
末候楓蔦黄(もみじつたきばむ)楓や蔦が色づき、紅葉が見頃を迎える頃。晩秋の美しい景色です。

冬の節気一覧と養生のポイント

冬の節気一覧と養生のポイント
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冬は「閉蔵(へいぞう)」の季節です。これは、万物が活動を停止し、エネルギーを内側に閉じ込めて蓄える状態を指します。動物は冬眠し、植物は葉を落として根に養分を蓄えます。

人間も同様に、無理に活動的になるよりも、静かに過ごして英気を養うことが推奨される時期です。寒さで体温が奪われるため、「腎(じん)」を養い、体を芯から温める「温活」がテーマとなります。

立冬(りっとう):11月7日頃

暦の上での冬の始まり。「木枯らし1号」の便りが届き、日差しが弱まってきます。コタツやストーブなどの暖房器具を使い始める日「炉開き」が行われるのもこの頃です。

初候山茶始開(つばきはじめてひらく)山茶花(サザンカ)が咲き始める頃。「つばき」と読みますがサザンカを指します。
次候地始凍(ちはじめてこおる)大地が凍り始め、霜柱が立つ頃。足元から冷えが伝わってきます。
末候金盞香(きんせんかさく)水仙の花が咲き、良い香りを漂わせる頃。「金盞」は黄金の盃(水仙の中心部)を意味します。

小雪(しょうせつ):11月22日頃

わずかな雪が降り始める頃。まだ積もるほどではなく、寒さも本格的ではありませんが、冬の到来を実感し、お歳暮の準備などを始める時期です。

初候虹蔵不見(にじかくれてみえず)日差しが弱まり、曇り空が多くなって虹が見られなくなる頃。
次候朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)冷たい北風(朔風)が強く吹き、木々の葉を散らしてしまう頃。
末候橘始黄(たちばなはじめてきばむ)橘(柑橘類)の実が黄色く色づく頃。常緑の橘は「永遠」の象徴です。

大雪(たいせつ):12月7日頃

本格的に雪が降り積もる頃。山々は雪化粧し、スキー場などがオープンします。平地でも北風が吹き荒れ、寒さが厳しくなります。ブリや大根など、冬の味覚が美味しくなる時期です。

初候閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)重い雲が空を覆い、真冬の空気が天地を塞ぐ頃。
次候熊蟄穴(くまあなにこもる)熊などの動物が穴に入って冬眠する頃。
末候鱖魚群(さけのうおむらがる)鮭が産卵のために川を遡上して群がる頃。

冬至(とうじ):12月22日頃

一年で最も夜が長く、昼が短い日。太陽の力が一番弱まりますが、翌日からは再び力が甦るため「一陽来復(いちようらいふく)」といって運気が上昇する転換点とされ、祝祭的な意味合いを持ちます。

初候乃東生(なつかれくさしょうず)夏至に枯れたウツボグサ(乃東)が、この極寒の中で芽を出す頃。
次候麋角解(さわしかつのおつる)大鹿(ヘラジカなど)の角が抜け落ちる頃。角の生え変わりは再生の象徴です。
末候雪下出麦(ゆきくだりてむぎのびる)雪の下で麦が芽を出し始める頃。踏まれても育つ麦の生命力を感じます。

冬至には、邪気を払う強い香りを持つ「柚子湯」に入り、栄養価の高い「カボチャ(南瓜)」を食べる風習があります。「ん」のつく食べ物(レンコン、ニンジンなど)を食べて「運」を盛るという願掛けも楽しいですね。

小寒(しょうかん):1月6日頃

「寒の入り」。これから節分までが一年で最も寒い「寒の内(かんのうち)」となります。寒中見舞いを出し始める時期です。

初候芹乃栄(せりすなわちさかう)冷たい水辺で芹(セリ)が群生する頃。春の七草の一つです。
次候水泉動(しみずあたたかをふくむ)地中の凍った泉が溶け、動き始める頃。見えないところで春の準備が進んでいます。
末候雉始雊(きじはじめてなく)雄の雉(キジ)が求愛のために鳴き始める頃。

この時期の1月7日には「人日の節句」として七草粥を食べ、お正月のご馳走で疲れた胃腸を休めます。

大寒(だいかん):1月20日頃

二十四節気の最後。寒さが最も厳しくなる時期ですが、ここを乗り越えれば春です。空気中の雑菌が少ないため、味噌や酒、醤油などの「寒仕込み」に最適な時期とされます。

初候款冬華(ふきのはなさく)蕗の薹(フキノトウ)が雪の下から顔を出し、花を咲かせる頃。
次候水沢腹堅(さわみずこおりつめる)沢の水が厚く凍りつく頃。この時期の氷は純度が高いとされます。
末候雞始乳(にわとりはじめてとやにつく)鶏が鳥屋に入って卵を産み始める頃。春の気配を感じて産卵率が上がります。

この大寒が終わると「節分」を迎え、翌日はまた「立春」から新しい二十四節気のサイクルが始まります。

手紙で使いたい時候の挨拶文例

手紙で使いたい時候の挨拶文例
神社と日本の伝統文化・イメージ

ビジネスメールや手紙の冒頭で使う「時候の挨拶」も、二十四節気を知っていると、より情感豊かに伝えられます。定型文だけでなく、その時期の七十二候の言葉を添えるのも素敵ですね。ここでは、季節の移ろいを感じさせる文例をいくつかご紹介します。

季節を感じる挨拶のヒント

  • 3月(啓蟄の頃)
    「一雨ごとに春めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。」
    「虫たちも土から顔を出す頃、皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。」
  • 5月(立夏の頃)
    「風薫る爽やかな季節となりました。」
    「暦の上ではもう夏、吹く風にも初夏の気配を感じます。」
  • 10月(寒露の頃)
    「秋の夜長、虫の音が心地よい季節です。」
    「朝夕の冷え込みに、深まりゆく秋を感じる今日この頃…」
  • 12月(冬至の頃)
    「寒さもひとしお身にしみる頃となりましたが…」
    「柚子湯の温もりが恋しい季節、皆様お変わりございませんか。」

相手の住む地域の気候を思いやりながら、言葉を選ぶ時間は、デジタルなやり取りが多い現代だからこそ、相手の心に響く贈り物になるはずです。

「今の時期は七十二候でいうと『桃始笑』だな」と思い出し、「桃の蕾もほころぶ季節ですね」と一言添えるだけで、文章全体がパッと華やかになりますよ。

季節を感じる暮らしと今日の暦

季節を感じる暮らしと今日の暦
神社と日本の伝統文化・イメージ

現代の生活では、どうしても「日付」や「時間」という数字に追われがちです。でも、「今日の暦は何だろう?」と少し意識を向けるだけで、見慣れた景色が違って見えてきます

たとえば、「今日は立春だから、少し苦味のある山菜を夕食に出してみようかな」とか、「半夏生だからタコを食べてみよう」といった具合に、食卓に小さな季節を取り入れるだけでも十分です。

また、七十二候にある「虹始見(にじはじめてあらわる)」の時期に雨上がりの空を見上げてみたり、「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」の頃に足元の土を見てみたりすることも、自然との対話になります。

無理なく楽しむことが大切

暦通りの生活を完璧にこなそうとすると窮屈になってしまいます。昔と今では気候もライフスタイルも違いますから、「あくまで目安」として捉えましょう。

自分の感覚と照らし合わせながら、「そろそろこの花が咲く時期かな?」と予想してみたり、スーパーで旬の食材を見つけて季節を感じたりと、楽しめる範囲で取り入れるのが長く続けるコツです。

二十四節気と七十二候を取り入れた生活

二十四節気と七十二候を取り入れた生活
神社と日本の伝統文化・イメージ

今回は、日本の美しい暦である二十四節気と七十二候について、その全容を詳しくご紹介しました。

これらは単なるカレンダー上の印ではなく、先人たちが自然と共生する中で見出した、暮らしの知恵の結晶であり、現代の私たちにとっても「心地よく生きるための羅針盤」となり得るものです。

私自身、この暦を意識するようになってから、「寒いのも暑いのも、季節が巡っている証拠だな」と、どんな気候も前向きに受け入れられるようになった気がします。

24の節気と72の候、それぞれの季節が持つ物語を知ることで、何気ない日常が彩り豊かになります。

ぜひ、皆様も今日からふとした瞬間に空を見上げ、風を感じ、二十四節気と七十二候が教えてくれる季節のメッセージに耳を傾けてみてください。きっと、これまで気づかなかった日本の美しさや、旬の喜びに出会えるはずです。

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はじめまして。月影と申します。
神社や日本の文化が好きで、その魅力を伝えたくてブログを始めました。
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